Rouge Feu 4−4


 「大地っ、大地……」
 ラビが必死に叫んだ時、光の魔法陣はさらに眩い光を放ち、腕の中から大地がふわりと宙に浮き上がった。
 『……光の戦士達よ…私は太陽王。』
 「太陽王?」
 大地を腕に横抱きにして浮かび上がった姿は、自分を太陽王と名乗った。
 『この者の中に私を移そう。暗黒大邪神を倒すのだ、光の戦士達よ』
 そう言うと、太陽王の姿はふっと消え、大地が立っていた。光に包まれた大地の瞳がゆっくりと開かれ、ラビ達を見つめるとにっこりと微笑み掛けてくる。
 「ラビ、ガス……」
 「大地」
 「大地くん」
 近づき、ラビとガスは大地の手を取る。途端に三人は地上へと転移した。
 残されたサユリは一時祈るように見上げ、ついでシャマンを見つめる。
 「どうしますか?まだ私たちと戦いますか?」
 無言のままシャマンは吐息を付くと姿を消した。サユリもまた地上への道をとって返した。
 地上ではXメイが暗黒大邪神の中に転移し、アグラマントと対峙していた。
 「メイ、久しぶりだな」
 「ラーマス、どうして……と今更聞いても仕方ないことだろうね。だから、今はあたしの全力をもってお前さんを元に戻してみせるよ」
 「大した口の効き方だな。だが、わしの力に邪神の力が加われば、この世界を全て手に入れることができるのだ」
 Xメイは哀れむようにアグラマントを見ると、両手を合わせて魔動力を放つ。アグラマントも邪動力を放ちその二つは宙で火花を散らしてぶつかった。ここからはどちらの力が強いかで勝敗は決まる。
 「く……」
 「くわっ」
 じりじりとXメイは押され、今にもその力に弾き飛ばされそうになった。だが、そこにもう一人の姿が浮かび、Xメイに合わせるようにして魔動力を放った。
 「お前は…」
 「あなたをこのままにしておく訳にはいきません」
 「サユリさん」
 にこりとXメイに微笑み掛けたサユリは、気を引き締めると力の限り魔動力を放った。二人分の魔動力を受け止め僅かに苦しそうな表情を浮かべたアグラマントだったが、すぐに立ち直り圧倒し始める。
 「馬鹿な奴だ。このわしにかなうとでも思っているのか。この父に…」
 「…きゃあっ…」
 娘であるサユリの裏切りに、アグラマントは怒りの表情を浮かべ邪悪な気を撃ち放つ。サユリとメイは堪えきれずにふっ飛んだ。
 「くくく、お前達も暗黒大邪神の力となれ……おおっ! うわっ」
 「母さんっ」
 最後の一撃を加えようとしたアグラマントの前に立ちはだかるようにラビの幻影が現れ、邪動力を払い光の魔動力を放った。強いその光にアグラマントは怯みよろけた。
 サユリとVメイは暗黒大邪神の目となっている大きな鏡を通してラビと大地、ガスの姿が見た。大地が身に纏っているのは太陽王の眩い黄金色をした甲胃で、三人ともそれぞれの武器を持ち、邪神に攻撃を仕掛けていく。
 「私は風の守りをっ!」
 邪神の激しい攻撃にガスが大地の前に立ち、両手を上げて魔動力の壁を作る。
 「俺は水の生命力を…大地っ!」
 その隣にラビが立ち、大地に呼びかけた。大地は領き、両手を組み合わせ呪文を唱える。
 「ドーマ・キ・サラ・ムーン……太陽の炎より作られし剣よ、我が手に…!」
 呼びかけに応えるように燃えさかる炎の剣が現れ、大地はそれをしっかりと握りしめた。
 「く…くそう…太陽神だと?」
 焦り大地を見たアグラマントは、何とか邪神を操って攻撃しようと手を伸ばした。しかし、その前にサユリがすっと立ち首を横に振った。
 「たとえ、私が倒されても、マリウスが、私の息子が意思を継いでくれるでしょう」
 「なっ、何をっ…やめろ、サユリ……」
 再びXメイとサユリはアグラマントに向かってありったけの魔動力を放ちながら近づき、両腕を掴んだ。絶叫を上げ仰け反るアグラマントに、生命力までも加えて魔動力を注ぎ込んでいく。
 「…! ぐあ……は…」
 「ラーマス…戻っておくれ」
 「お父様…」
 「大地くんっ、今です!」
 「いっけえっ、大地!」
 「ゾーラブレード!一刀両断!」
 アグラマントが光に包み込まれるのと同時に、大地の持つゾーラブレードは暗黒大邪神をまっぷたつに切り裂いた。邪神は苦悶の絶叫を上げ、炎と光に包み込まれて消えていく。
 きらきらと僅かなきらめきを残して全て無くなった場所に、サユリとXメイ、そして元の姿に戻ったアグラマント…ラーマスが横たわっていた。
 「母さんっ」
 「おばばさま」
 慌てて近付いていくと、二人はゆっくりと起きあがり未だ地面に横たわったままのラーマスを哀しそうに見下ろした。
 「……済まなかった…わしの心が弱かったのだ」
 「ラーマス…もういいんだよ」
 Xメイが全てを許すように微笑んでゆっくりと首を縦に振ると、ラーマスはサユリとラビを見つめ僅かに笑みを浮かべて静かに目を閉じた。
 「…お父様……」
 サユリの目から涙がこぼれ落ちる。ラビは肉親が死んだという実感が湧かず、ただ僅かな胸の痛みを覚えながらもサユリが無事だったことにほっとした。
 「…大地?」
 その場に駆けつけなかった大地の姿を探してラビが顔を巡らすと、未だ太陽神を纏ったままの姿が見える。首を捻って近付いていったラビは、大地の前にシャマンの姿を見いだしてはっと息を飲んだ。 「そうだ、未だあいつがいやがったか。大地っ」
 慌てて駆け寄るラビとガスに、シャマンはちらりと目を向け再び大地に視線を移す。大地は戦意を失っては居なかったが、シャマンの態度に戸惑っていた。
 「私はもう戦うつもりはない」
 ぽつりと言ったシャマンの言葉に、大地は驚いて彼を見つめた。本気なのかと睨み付けると、にこりと笑顔で返され益々戸惑ってしまう。
 「戦ってもお前には勝てないだろうからな」
 大地だけを見て言うシャマンに、ざわざわとラビの背筋に悪寒が走り抜けた。長い方の耳の毛まで立ってしまい、ラビは大地をシャマンの目から隠すように立った。
 「お前との勝負は終わってないぞ」
 「他の勝負なら、確かに終わってはいないな、小僧」
 「何だとっ」
 大地に対するのとはあからさまに違う冷たい口調に、ラビは怒鳴りつけた。何のことだか全く判らない大地はただ首を捻って火花を散らしている二人を見つめるだけである。
 「ちょ、ちょっと、ラビ、一体何の話だよ」
 「大地、私は一旦邪動星へ帰る」
 「え?そっか、どこからかは来てたんだものな」
 今まで彼ら邪動族がどこから来たのかなんて気にもしなかった大地は、納得して領く。
 「帰れ帰れ」
 「だが、再び戻ってくる。今度は侵略ではなく、花嫁を手に入れるために」
 「は、な、よ、め?」
 目が点になってしまった大地に素早く近付くと、シャマンはその手を取って甲に口付けた。怒り狂ったラビが剣を抜き打ちかかるのをひらりと避け、さらばと呟いてシャマンは異空間に消えていく。ただ呆然と口付けられた手を見つめ、怒りに青筋立てているラビを見つめ、大地は力無く笑った。
 「大丈夫ですか? 大地くん」
 「うん…何かやっぱへんな奴だったな」
 「くっそーっ、なーにが花嫁だっ! 今度来たらざちょぎちょのぐちょぐちょにしてやる」
 地団駄を踏むラビの姿に、シリアスムードは一気に壊れサユリもXメイも呆れて笑うしかなかった。
 あれからすぐに光の塔が地面から空に伸び、そこから優しい光がラビルーナ全体に満ちあふれた。力を無くしていた巨人は背筋を伸ばして立ち上がり聖地を支え、全ての階層に光が満ちる。
 塔と一緒に封印されていた聖地に仕える人々も元のように生き生きと動き始めていた。そんな中、ラビルーナを救った英雄とされた大地達は丁重に塔の最上部に迎えられ、一部屋ずつ与えられて久しぶりにゆっくりとした時を過ごすことが出来た。
 「はぁーあ…」
 出窓にひじを突き外の暗闇ををぽんやりと見つめていた大地は大きな溜息を付いた。漸く長かった戦いも終わり、明日にでも月の上に戻れるのに、何だか気が進まない。
 月のカレッジに入学した目的は、自分の夢である宇宙飛行士になって外宇宙へ冒険の旅をすることだが、その時教授に言われた、宇宙は目に見えるものだけではないという言葉が、こんな現実になって自分の身に降りかかるとは思いもしなかった。
 戻っても誰も信じる者は居ないだろう、もう一つの宇宙……月の内部にあるラビルーナの物語。
 ちらりと目を部屋の中に向け、壁に付けられている飾り棚の上を見る。そこには魔動銃と太陽王の印である小さな冠が置かれている。
 「地上に戻ると魔動力もなくなっちゃうんだろうか」
 ここにある全てのもの、力、物語を置いて自分の世界に戻るのは、とても辛い。心の中にそれらは在るのだと理解していてもやっばり悲しい。
 「ラビ」
 さっきまで催されていたパーティの席で、ラビは正式にXの称号を受け継ぎ、マリウス・フォン・ラーマス…Xラーマスとして紹介されていた。立派な法衣に身を包んだラビは、自分の知っている彼では無いような感じで、大地はそそくさと戻ってきてしまったのだ。
 太陽王の再来と騒がれるのも、ラビの方が相応しいから、この冠も上げてしまおう。どうせ地上に持って行けないのだ。
 「大地、何で引っ込んじまったんだ」
 いきなりのノックの音と共にラビが中に入ってきた。びっくりして見ると、僅かに眉を潜ませて、怒っているように表情を見せている。
 「何でって、あーいう席は苦手だよ」
 ぷいとそっぽを向いて言う大地に、ラビはずかずかと近付いていく。未だ出窓でひじを突いている大地の両腕を取り、無理に立ち上がらせた。
 「何だよ、主役がいなきゃ始まらないだろ。戻れよ、お前の好きそうな可愛い子も一杯いたじゃないか」
 「大地!」
 一声叫ぶとラビはぎゅっと大地を抱きしめた。もがいて逃れようとする大地をさらに強く抱きしめてラビは首筋に顔を埋める。
 「俺、明日には地上に戻る。戻ってフツーの学生になって、フツーの生活して…」
 「戻さないって言ったらどうする?」
 身体を少し離してラビは真剣にそう訊いた。
 「戻したくない。ずっと一緒に旅していたい。……好きだ、大地」
 「俺も…」
 微かに微笑んで大地が呟く。ラビはゆっくりと顔を落として口付けた。
 口付けは軽いものから徐々に深く激しいものになっていき、大地は息苦しくなって顎を仰け反らせた。舌を絡ませ、口腔を愛撫しながらラビはそろそろと手を下げて大地の衣服を脱がせにかかる。
 シャツのボタンを純に外し、それに合わせるように離した唇を首筋から鎖骨に掛けて這わせていく。全部外したシャツの聞から覗く肌に唇と舌を這わせ、淡い色の付いた突起に指を絡ませて軽く擦ると、大地の息が驚いたように飲まれる音がした。
 「ら…ラビ……」
 「大地の全部が見たい…欲しい……」
 指先で擦り上げるうちに堅くなってきたそれに、今度は舌を絡ませる。濡れた感触とたまに甘噛みされる未知の痛みに大地はただ息を堪えてラビの頭を抱え込んだ。
 両方の突起を存分に堪能しながらラビは片手で大地のズボンを緩め、下腹部に触れていく。胸への愛撫で熱くなっていたそれは、すぐに反応を示し、ラビの手に包み込まれると大地の腰はびくりと痙撃した。
 「や、やだよ…変だ」
 「変じゃねえよ。こんなことしてんだから当然だろ?それとも、まさか、この歳で自分でしたこともねえ…」
 ラビの手から逃れるように腰を捻る大地に、からかうような視線を向けたラビは真っ赤になった顔を見て途中で言葉を止めた。
 「…ある…けど……でも汚いだろ」
 「お前のだったら全然汚くなんかない」
 恥じらいながら言う大地に、ラビは心臓が今まで以上にばくばくと飛び上がるのを押さえ、手にしたものに唇を寄せた。
 「はっ…ああ……」
 大地を出窓に半分座らせるような格好にして、ラビはそれを舐めあげ吸い上げる。先端を指でくすぐりながら全体を下から上へ舐めあげると、大地はくっと唇を噛みしめ背を反らせた。
 「我慢すんなよ」
 ラビの息も掠れぎみで、大地の痴態を見ているだけで我慢しきれなくなってきた。
 「ラ、ビ……離せ……も…」
 大地はラビの頭を離そうと手で押しのけようとするが、叶わずにただ抱え込むようにしがみつくばかりとなってしまう。ラビがすっぽりとそれを包み込み吸い上げると、大地は微かな悲鳴を上げて果てた。
 大地の放ったものを全て飲み込んで拳で口元を拭うと、ラビはぐったりと窓に寄りかかったその身体を抱え上げ寝台に運んでいく。
 邪魔な服を取り除き、自分も全裸になるとラビは改めて大地に重なっていった。
 再びラビの手に煽られて熱を持ってきたそれから一旦手を引き、大地の両足を抱え上げてもっと奥の入り口を目の前に晒す。大地は自分がどんな格好をしているのかすら判らなくなっていたが、奥の自分でもあまり触れたことのない場所に濡れた感触を覚えてぎくりと身を強張らせた。
 「…あ……何?…ラビ……」
 ぴちゃぴちゃと音がして、そこが濡らされていると判り大地は真っ赤になって身を振らせる。だが、前の中途半端な昂まりと、後部への舌先の感触に力が入らない。
 「嫌だ…そんなとこ汚いって……」
 「お前に汚いとこなんか無いっていっただろ。ここもピンク色で凄い綺麗だ」
 「ばっ……」
 かああっとラビの言葉に身体が燃えるような羞恥を感じ、大地は身を竦ませた。濡れた感触は今度ははっきりとした実在感の指に代わり、それはその部分を解すように動き回ると出ていった。
  「うわあっ…あっ!」
 代わって入って来たのは、さっきのものとは比べものにならない程熱く大きなもので、ゆっくりと大地を犯していく。痛みに強張った大地の身体を解すために、ラビは一旦動きを止めて前への愛撫を再開した。
 「あっ…あ…あぁ」
 「大地…」
 愛撫で力が抜けたところを見計らってラビは一気に身を進ませる。するともう我慢の限界に来ていたラビは、大地の身を気遣う余裕もなく腰を突き動かして攻め立て、最後に一際大きく動くと息を詰めて白身を解放した。



 「やれやれ、これじゃ今日には地上に戻してあげられないねえ」
 「いっそ、このままマリウスのつがいになってもらうという案もありましてよ、メイ様」
 痛みに腰をうずかせたままシーツにくるまり耳を塞いでいた大地は、隣でラビが、あっそれ良い案と言うのを聞いてぽかりと殴りつけた。
 途端、ずきりと全身に痛みが走ってしまう。
 朝あまりに起きてくるのが遅いと出迎えたガスが大騒ぎをして、Xメイとサユリを呼び寄せてしまったのだ。二人が病気になったのだと思ったのだと、ガスは後で詫びたがほんとのところはどうなのか。
 「くうう〜……」
 でも、この口実で、少しだけまだ一緒に居られるのは幸せなのだろうか?と考えた大地は、後にのほほんと地上にやってきたラビを見て後悔することになるのだった。

                                                    終わり


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