パスカルの群−fujimiya-3
「藤宮…本当にいいの? ここで寝泊まりするって」 「ああ。確かにここに居ればわざわざハッキングする必要はないからな」 我夢はぎょっとして藤宮の顔を見上げた。藤宮は微かに口端を上げ笑みを浮かべる。 「そんなことしなくても、情報なら渡すのに」 「それがばれたら懲戒ものだろうが」 「今更だよ…一度君と通じてるんじゃないかって追放されたしね」 あの頃を思い出すように苦笑いを浮かべる我夢に、藤宮は腕を伸ばし頭を撫でた。そのまま側に近付こうとした我夢は、ぱっと離れてしまう。その側を不思議そうに作業員が我夢に一礼して通り抜けていった。 「ここは人目が多いな」 「ごめん…やっぱり玲子さんと一緒の方が良かった?」 少し離れて歩き始めた我夢の言葉に、藤宮は僅かに眉を顰めた。 「一緒に暮らしてたんじゃない? この前も一緒に居たし。ここに居ると部外者とはなかなか会えないから」 「別に構わない。俺がここに居るのは、お前の力になるためだ」 藤宮の言葉に我夢は顔を赤く染めて俯いた。 「その言葉は本当か」 いきなり前方から鋭い声が掛けられ、二人は視線を向けた。そこには口をへの字に曲げて仁王立ちしている梶尾の姿があった。その後方には稲城の姿もある。 「梶尾さん! 稲城リーダーも…なんで」 「本当かと訊いている」 我夢の問いに応えず、梶尾は藤宮に目を据えて再び訊いた。おろおろと両方を見る我夢をちらりと見て、藤宮は顎を逸らし答えた。 「あなた達に答える義務はない」 「なにっ」 「ちょ、藤宮」 ふん、と鼻先で笑い藤宮は我夢の腕を取ると歩き始めた。睨み付け、今にも掴みかかろうとする梶尾を稲城が押さえ、低い声で言った。 「私たちは精一杯あなた達、二人を援護していくわ。それだけは覚えておいて」 藤宮は立ち止まり二人を見つめると、再び歩き出した。我夢も二人を気にしながら藤宮に着いていく。部屋の前まで来ると、我夢はここだと示して中へ入った。 ここへ来て間がないためか我夢の部屋にしては片づいている。樋口の言葉通り既に簡易ベッドが置かれていて狭さは倍増していたが。 「何であんな喧嘩腰なんだよ」 「向こうがそうだからだ」 確かに梶尾は今までの出来事があったせいか、藤宮を敵視している。藤宮の方は全く覚えていないだろうが、以前ジェクターガンを向けたこともあったのだ。 「…だが…お前は本当に好かれてるんだな」 微笑んで藤宮は我夢を見つめた。その柔らかい笑みに、我夢は見とれてしまう。 「藤宮だって…きっと、みんな好きになるよ」 「俺は…」 ただ一人に好かれればいいと藤宮は言葉にせず思い、我夢に顔を寄せた。しっとりと唇を吸い上げ、離す。真っ赤になって口を手で押さえる我夢を、藤宮は抱き締めた。 本物の我夢はあの手先が化けたモノのように、好きだとも愛しているとも言わない。自分が一方的に欲しくて奪って、それでも嫌われていないというだけだ。これ以上何を望むのかと、藤宮は自嘲する。けれど、抱き締めた身体を離すことは難しい。 「藤宮…」 問うように見上げる我夢に再び口付けると、藤宮はその身体をベッドに横たえた。何をされるか理解しているだろうに逃げようとせず、じっと見上げてくる我夢の目尻に藤宮はキスを落とす。そのまま耳元に唇を移動し、笑みを含ませながら囁いた。 「…ベッドは一つでも良かったな」 我夢の顔が赤くなったのが、寄せていた頬の熱さで判る。藤宮は我夢の顔中にキスの雨を降らせながら、コンバーツのジッパーを引き下げた。 合わせた唇を舌で開かせ、中に進入していく。舌を絡ませ、口腔を貪るように藤宮が口付けると、我夢は眉根を寄せ、苦しげに藤宮の肩を掴んだ。 口付けが深くなるに従って、我夢の手や身体から力が抜けていく。藤宮はコンバーツを脱がせるとアンダーシャツの中に手を滑り込ませた。 「ぁ…」 探り当てた突起を指先で転がすと、口付けから逃れた我夢の口から短い吐息が漏れる。暫く藤宮が突起を弄っていると、それはやがて堅さを増して我夢の身体に痛みではない感覚を与えていった。 藤宮はアンダーシャツを我夢の首元まで捲り上げ、露わになった突起に唇を寄せた。堅さを楽しむように舌先で転がし、もう一方の突起は指で押し潰すように愛撫していく。 我夢はその刺激に藤宮の頭を引き剥がすよう手を添え、身を捩った。藤宮はあまり力の入ってない我夢の手を無視して、両方の突起とも舌と唇で存分に嬲りながら片手を下半身へ伸ばした。 胸への愛撫で半ば張り詰めている我夢自身を、藤宮は確かめるように上から押さえ、ベルトを外しジッパーを下げていく。 下着の上からやんわりと握りしめられ、我夢はびくりと身体を痙攣させた。 「だ、駄目だ藤宮、怪我して起きたばっかりじゃないか…」 下着をかいくぐり、直に触れられるのを避けようと、我夢は弱々しく首を振り抵抗する。それを押さえつけ、藤宮は下着ごとコンバーツを引き下ろした。 両足から引き抜いてそれをベッドの下に落とし藤宮は、驚いて目を瞠る我夢の顔をじっと見つめた。本気で嫌がられたならこのまま引き下がり、大人しく隣で寝よう。だが、自分の身体を心配して言っているだけなら、抱きたい。 「嫌…か?」 藤宮は、理性では引き下がれると思っていたが、実際には我慢しきれなかった。我夢の応えを待たず、藤宮は我夢自身を握り締め愛撫を加えていく。 「あ…」 直ぐに勃ち上がってきたそれを上下に扱くと、我夢は目をぎゅっと閉じてシーツに伸ばしていた手を藤宮の背中に回した。 それを肯定と都合良く受け取って、藤宮は更に愛撫を加えていく。先走りの液で我夢自身と手が濡れた音を立て始めた。藤宮は弾けそうになっている我夢自身の根本を強く押さえると、身体を下にずらして臍の周りに口付けながら、もう片方の手で我夢の両足を大きく広げた。 「やっ、やだ」 閉じようにも藤宮の身体を挟む格好になってしまっては、どうにもならない。我夢は恥ずかしさに顔を赤く染め藤宮の髪に手を埋め押し退けようとした。 藤宮はそのまま下に頭を移動して、果てられずに震えている我夢自身を口中に含んだ。先端に溢れる透明な滴を舌先で掬うように舐め上げる。 「ひっ…ぁ…や」 快感に耐えきれず、じたばた暴れる我夢の腰を押さえ、藤宮は根本を押さえている手を外し強く吸い上げた。 「ああっ!」 大きく仰け反り、我夢はぎゅっと藤宮の髪を握り締め、その口中に自身を放った。ぐったりと力を抜く我夢の両足を更に押し広げ、藤宮は口中に出された液体を少しずつ指に移して奥まった部分に塗り込めていく。 指が増やされ、その部分に出入りする度に、我夢は悲鳴とも喘ぎともつかぬ声を発して身悶えた。その様に、藤宮自身も熱く滾ってくる。 我夢を翻弄しながら藤宮は手早く下半身を露わにすると、指と液体で充分に解されたその場所へ、己をゆっくり挿入していった。全てを納めきると藤宮は我夢を抱き締め、徐々に腰を動かしていく。我夢の伸ばされていた両腕が上がり、藤宮の背に回った。 「…ふ…じみや」 揺さぶられながら必死にしがみついてくる我夢が愛しくて、藤宮は強くその身体を抱き締め口付ける。懸命に口付けに応える我夢を、藤宮は己の欲望のまま貪っていった。 |