「お、風船釣り…いっちょやるかあ」
人が群がっているのを掻き分け、炎は水風船釣りの屋台にしゃがみ込んだ。別にどうしても欲しい訳ではないのだが、普通のUFOキャッチャーには無い感覚にゲーム好きの腕が鳴る。
だが、慣れないからか、何度やっても釣れない。だんだん頭に血が上ってきて、それが余計に釣れなくさせている。
「そんなかっかしていては、出来ないぞ」
「うるせーっ、取ってやる〜」
後ろから声を掛ける海に顔を顰め、炎は再びチャレンジする。けれど、無情にも紐は切れ、炎はむうとそれを眺めた。
「…貸してみろ」
見かねた海が炎から釣り糸を取り、気合い一閃赤い模様の風船を釣り上げた。続いて青い風船も釣り上げる。
あっという間に4個の風船を釣り上げた海は、にやりと笑うと炎にそれを返した。
「……嫌みな奴…」
あっさりと糸が切れ、海に赤い風船を貰うと炎はぼそりと呟いた。それぞれに合った色の風船を持ち、屋台を眺めながら境内の奥へと向かう。徐々に屋台は少なくなるが、人々はもっと奥へと歩いていった。
「なんでみんな山の方へ行くんだ?」
「この山からよく見えるんですよ、花火が」
「そうそう…ちょっと上るの大変だけどな、綺麗だぜ、街の明かりも見えるし」
「へー…そうなんか…」
「そろそろ上ってみるか?」
「そうだなあ…」