温泉へ行こう!revenge


 資料室で前回の戦いのデータを纏めていた我夢は、ナビのコール音に手を止めて蓋を開き応えた。
「あ、樋口さん、何か?」
「お久しぶりです、高山さん。先日からの地底貫通弾の調査についてなんですが、ちょっと気になる場所があるんです」
 穏やかに微笑んで挨拶をしたナビの向こうの樋口は、口調を改めて我夢に話し出した。我夢も笑顔を引っ込めて樋口の話に聞き入る。先日からの地底貫通弾に関する影響は、各ガード支部で調査しているものの、表だって非難するような声は聞こえてこない
 だけどこの前のツチケラのように、重大な影響がある場合もあるのだ。僅かな兆候でも見逃したら大変なことになるだろう。
「それで、本当に僅かな数値が出ているだけなので、我々の方も大きく動くには世論的にまずいといいますか」
 樋口の言葉は珍しく歯切れが悪かった。最近破滅招来体が頻繁に訪れるせいか、調査依頼があって、ジオベースだけで地味に行ってるだけでも、ぴりぴりとした反応を見せる。環境に対する変化はないと断言しても、その後暫くはその地に訪れる者は激減してしまうのだ。
「そうですか。それじゃ、はっきりとデータには現れてる訳ではないんですね」
「そうなんです。微妙なラインで…、でも万が一ということもあるので一応お知らせしておこうかと思いまして」
「解りました。今度の休暇に足を伸ばしてそこまで行ってみます」
 我夢がそう言うと、樋口は困ったようなほっとしたような表情で頷いた。
「申し訳在りません。休暇を潰させてしまいますね」
「気にしないで下さい。ちょっと荷物が多くなるだけです。それに、樋口さんがそんなに気にするなんて、数値としては出て無くても何かあるんでしょ?」
 笑顔で言う我夢に樋口も苦笑を浮かべた。
「ええまあ、ただの勘なんですけどね。何もなければなによりなんですが」
 そう言うと樋口は本当にすみませんと言って通信を切った。コマンドルームへ通信してこなかったことを見ても、大げさにするほどではないが気になるということなのだろう。
 我夢は眉を曇らせ、地底貫通弾と柊のことを思い浮かべた。自分の耳で聞いたわけではないが、柊の主張も理解できないではない。あの環太平洋部隊が全滅した時に現れたゾンネルを自分は地底に帰してしまった。それは彼にしてみたら裏切り以外のなにものでもなかったのではないか。
 味方だと思っていたウルトラマンがあてにならず、自分の手で人類に害を成す怪獣を滅ぼすためにはたとえ地球に影響があろうと地底貫通弾を使う以外ないのだから。
「何難しい顔してるの、可愛い顔が台無しよ」
「稲城リーダー、可愛い顔ってなんなんですか」
 肩を軽く叩かれて、我夢は振り返った。笑顔で見ている稲城に我夢はちょっと膨れてみせる。ほら、そーいう顔、と稲城は指先で我夢の頬をつついた。
「い、稲城リーダー」
 焦って我夢は身を引く。からかわれることは多いが、こういうスキンシップはまだまだ恥ずかしいのだ。敦子あたりにならまだ文句も出ようが、年上美人の稲城相手だと、狼狽えてしまう。
「最近難しい顔してる時が多いけど、たまには今みたいな顔見せてよね」
 くすくすと笑って稲城は手を振り出ていった。何しにきたんだと肩を落としながら、我夢は自分の顔を掌でなぞってみた。稲城が言うほど難しい顔してるんだろうか。
 とにかく、早い内に休暇を申請しようと我夢は手早く今やってるデータ整理を終え、コマンドルームへ向かった。
 我夢が休暇申請を出すと、敦子の眉がぴくりと上がった。何?とジョジーが敦子の手元を覗き込む。
「あれ、また温泉?」
「え、あ、うん。この前は落ち着かなかったから」
 ジョジーの訝しげな声に我夢は慌てて応えた。
「そりゃあ、落ち着かないわよねえ。梶尾さんと一緒だし、みんなで楽しく温泉行って来たんだもんねえ」
 敦子の皮肉たっぷりな言葉に、我夢は反論しようとしたが、泥沼になりそうだったのであっさり降参した。確かに楽しかったけれど、それ以上に疲れまくった温泉旅行だったのだ。何であんなことになったのか、未だに我夢にはよく解っていなかった。
「今度は一人で行くから、多分大丈夫だよ。あ、それとも一緒に行く?」
「なっ、何馬鹿言ってんのよ!冗談じゃないわ」
 我夢の言葉に敦子は頬を微かに赤らめて怒鳴った。単に行きたいなら一緒にと思って誘っただけなのに、過剰な反応に我夢はびっくりして敦子を見つめる。そんな二人を可笑しそうにジョジーは眺めていた。



 というわけで、例によって梶尾が着いて来たさそうだったのだが、シフトを理由に断って今回は何とか一人で地上に降りた我夢は、ローカル線の駅を降り宿へ向かって歩き始めた。
「ほんっとに梶尾さんてば、僕のこと信用してないんだから」
 ダヴライナーに乗り込むまで、難しい顔をして見ていた梶尾を思いだして我夢は溜息を付いた。休暇を取って何か悪さをするとでも思ったのだろうかと我夢は首を捻る。別に梶尾が信用してないのは、我夢ではなく、我夢の周りに出没する者だったのだが。
 温泉までは歩いて二十分くらいだったが、我夢は途中樋口に気になると言われた場所を調べに山へ入っていった。
 細い山道を上がり、小さなせせらぎに出ると我夢はさっそく装置を取り出して清流を調べ始めた。ここから地底貫通弾の発射場所まで三キロくらい離れているのだが、確かに微かな反応があった。だが、この程度なら普通は心配することはない。
「でもなあ…」
 以前の例があるし、楽観は出来ない。どう調べるかと思案していた我夢は、じっと見つめる視線を感じて辺りを見回した。
「藤宮!?」
 上流に佇んで見つめている藤宮に、我夢は驚いて目を見開き、ごろごろとした岩場を上っていった。
「何でここに?」
「ここを調べに来た」
「えっ、君も?…そういや、前の時も川に入ってたよね」
 確かめた訳ではないが、あの時川の中に居たのは藤宮だった。何をしているかまでは判らなかったが、水質を調べていたのか。
「今日はどうする」
「休暇を利用して来てるから、この先の温泉に泊まるんだけど」
 急に訊かれて我夢は戸惑いながらも藤宮に応えた。でも、と我夢は川の方を見返した。
「ここは心配ない。もう調べた」
「ほんと?どうやって」
 びっくりして訊く我夢に、藤宮は薄く笑みを浮かべて踵を返した。その様子に、アグルの力を使ったんだなと我夢は吐息を付く。まあ、それが一番早い方法だからいいけど、自分ならそうすることに躊躇うだろう。
 温泉街に着き、宿へ行く間も藤宮は我夢の前を悠然と歩いていく。どこまで行くのかと思っていたら、自分と同じ宿に入っていくのを見て我夢は驚いた。
 慌てて後に続くと、先に入った藤宮はフロントで手続きしているようだ。我夢もフロントへ行くと、出迎えた従業員が荷物を取り上げて藤宮の後に続き歩き始める。
「え?え?」
 訳が解らず藤宮の隣に並んだ我夢は、その涼しげな顔を見上げた。
「どうぞ、こちらのお部屋です。ごゆっくり」
 従業員は荷物を置いてお茶をいれ、一通り説明を済ませると去っていった。広い和室に二人で残された我夢は、まだ呆然としていたが、ぺたりと畳に座り込んだ。
「一人ずつ部屋を取るよりは、向こうにとってもありがたいだろ」
「それはまあ…でも、びっくりした」
 やっと納得した我夢はほっとしてお茶を飲み、用意されていた名産菓子を口に放り込んだ。甘い味と香りにふんわりと我夢は微笑む。幸せそうなその表情を見て、藤宮は苦笑すると自分の分も食べていいと渡した。
「ありがと。美味しいよ、これ。お土産に買って帰ろうかな」
 もぐもぐ口を動かしている我夢に、藤宮は立ち上がると衣装ダンスを開き中から浴衣を取り出して、我夢に放った。
「もう着替えるの?」
「風呂へ行く」
 ああそうかと我夢は頷いて立ち上がった。まず温泉に入ってから美味しい食事をして、またのんびりお湯に入ってゆっくり寝れば、疲れもとれるだろう。この前はそれどころじゃなくて結局静かにゆっくりのんびりと、は全く果たせなかったが。
 ここは前に泊まったような離れのある一軒家の宿ではなく、普通のホテル形式の温泉旅館だった。今はオフシーズンらしくしかも平日なため、泊まり客の姿はほとんど見られない。大浴場も人気が無く、貸し切り状態だった。
 我夢はさっさと服を脱ぐと中へ入っていった。洗い場でお湯をかけ、身体を洗い始めた我夢の手から、藤宮はタオルを取り上げた。
 不審そうに見上げる我夢の背中の方に廻ると藤宮は背中を流し始める。
「い、いいよ、自分でやるから」
「大人しくしてろ」
 ごしごしと力強く背中を擦られて、我夢は昔父親と一緒にお風呂に入って洗って貰った時のことを思い出した。洗うのが嫌でさっさと入ってしまいたかった自分を捕まえて、怒りながら痛くなるまで擦られたっけと我夢は思い出し笑いを口端に浮かべる。
 ぼうっとそんな事を考えていた我夢は、藤宮の手がするりと前へ伸びたことに対して一瞬反応するのが遅れてしまった。
「前はいいって」
 我夢の言葉が聞こえないように藤宮は、背中とは違う柔らかな力で胸を擦り始めた。自分の手ではないその洗い方に、我夢はくすぐったくて身を捩る。
 藤宮はそれに構わず、撫でるような洗い方で胸や脇腹をゆっくりと擦っていく。次第に我夢はくすぐったいより別の感覚が沸き上がって来るような気がして、息を詰めた。その手が股間に降りてくるのを我夢は咄嗟に押さえ付けた。
「藤宮っ、もういいよ」
 藤宮はそれ以上無理にしようとせず、手を離して湯をかけ石鹸を流した。我夢は荒くなりそうな息を整えると身を返し、お返しに藤宮の背中を流そうとしたがあっさり躱されてしまった。
「百数えるまで出てくるなよ」
「そんな言い方、子供じゃないんだから、もう」
 さっさと自分の身体を洗い始めた藤宮は、我夢に湯船にはいるよう促すと笑みを浮かべてそう言った。ちょっとむくれて我夢は大きな大理石で出来た湯船にはいる。温度も丁度いいし、温泉特有の匂いが気分を盛り立てる。
 我夢はのんびり身体を伸ばすと、洗い終えてシャワーを浴び始めた藤宮の背中を眺めた。滴の粒が厚みはないが綺麗に筋肉の着いたラインを流れ落ちるのを見て、我夢の身体の奥からさっき沸き起こりそうになった感覚が蘇ってくる。
 焦って我夢は目を反らし、窓際まで行って外に視線を向けた。日が落ちて山の端に赤みが残るのみで暗くなった空に、ぽつりと輝く星が見える。湯船の端に両手を預け、それに顎を乗せてぼんやり眺めていた我夢は、後ろに気配を感じて振り返った。
「び、びっくりするじゃないか」
「何焦ってる」
 すぐ真後ろに居た藤宮は眉を上げ、不思議そうに我夢を見た。自分でも何であんな上擦った声を出したんだろうと焦りながら、我夢は口を押さえて再び窓の外を見始める。
「綺麗だね…エリアルベースからじゃこんな景色は見られない」
「ああ」
 同意を求めて隣に来た藤宮の方を見た我夢は、その目が外をではなく自分に向けられていることに気付くと鼓動が跳ね上がった。今の応えは外の景色に向けて言ってる訳で、自分がどきどきすることはないんだと解っていても一度走り出した鼓動はすぐには元に戻りそうもない。
「お腹空いちゃった、もう出てまた後で入りに来ようよ」
 我夢はわざとお湯を蹴立てるようにして上がり、浴衣に着替えた。顔が火照っているのはお湯に浸かったせいだけではない。我夢は水で顔を洗い、少し頭を冷やすと部屋へ戻った。



 部屋で美味しい食事と酒…といってもお銚子一本くらいだったが…を楽しんですっかり満足しきった我夢は、下のお土産屋に行こうと藤宮を誘ったが、あっさり断られてしまった。
「俺が誰に土産なんぞ買って帰るんだ」
「玲子さん…とか」
 確かに温泉饅頭を土産に買っていって誰かに渡す藤宮など想像しにくい。あはは、と笑ってその想像を誤魔化し、我夢はロビーに降りていった。
 お土産を買って戻った我夢は、部屋にはいって荷物を置くと辺りを見回した、が藤宮の姿は見えない。鍵も掛けないまままた風呂へ行ったのかと、我夢も大浴場へ行ってみた。
「あれ、もう上がるの」
「先に行ってる」
 途中飲み物の自販機前に佇んでいた藤宮に鍵を渡し、我夢はほっとしながら歩き出した。また一緒に入るとなったら、胸がどきどきするだけでは済まなそうな気がしたのだ。
 今度こそのんびりほっこり温泉に入った我夢は、部屋に戻ると鍵をしっかり閉めて中へ入った。
「もう、ちゃんと鍵閉めなよ。めんどくさいからって開けっ放しじゃ…」
 文句を言いながら入った我夢は、目の前の情景に一瞬言葉を失った。広い部屋の真ん中に布団が二組ぴったり並べて敷いてある。
「どうした?」
 その一つに寝ころんで本を読んでいた藤宮に訝しげに声を掛けられ、我夢は唾を飲み込むと、狼狽えた様子を表に出さないようにしながら、ぺたりと空いていた方の布団に座り込んだ。
「べ、別になんでもないよ。藤宮はもう寝る?僕は今日の報告纏めないと」
「寝たいのは山々だが、一人じゃな」
「えっ?」
 にやりと笑って藤宮は本を置くと、我夢の方に手を伸ばした。驚く間もなく引き倒された我夢は、藤宮の上に乗り上げてしまう。焦って両腕を突っ張り藤宮から身体を離した我夢は、その首を掴まれ引き戻された。
「ん…っ…」
 肘で上半身を支えた藤宮は、引き下ろした我夢の唇に口付けた。唇を割り入って舌を差し入れ、藤宮は我夢の甘い舌を味わうよう絡め吸い上げる。始めは逃げまどっていた我夢の舌は、次第に従順に藤宮を受け入れていった。
「あっ、やだっ」
 藤宮は我夢の腰に回していた手で双丘の丸みを撫でると、前に廻り裾から太股を撫で上げた。藤宮の唇は耳に移動し、熱い吐息を吹きかけながら耳朶を舌先でなぞっていく。ぞくりとする感覚に、我夢の上半身を支えていた腕が震え崩れそうになった。
 首筋に唇を這わせながら藤宮は、必死で支えている我夢の上半身に愛撫を加えていく。肩から浴衣を落とし、半分露わになった胸を掌で撫でると、我夢の口から吐息が漏れた。
 掌の愛撫で堅くなった乳首を今度は指先で摘み転がすように刺激する。息を詰めてその感覚をやり過ごそうとする我夢の頬に口付け、藤宮は太股を撫でていた手をするりと前へ移動した。
「ひっ」
 ついにがくりと我夢の腕から力が抜け、上半身を藤宮に預ける。藤宮は肘で支えていただけの中途半端な姿勢を起こし、我夢もちゃんと自分の膝の上に座らせ、両腕を首に回させた。
 下着を押し上げている我夢のそれを表に出してやんわりと握り締める。上下に扱きながら、もう一方の手で背中を支え、既に堅く勃ち上がっている胸の突起を口に含んだ。
「ふ…じみや…あっ、あ…ぁ」
 我夢は頭を振り、必死に感覚を散らそうとする。だが、敏感になっている自身の先端を親指の腹で擦られ、口から出る嬌声を止めることは出来なかった。
 堅く張り詰め、先端から先走りの露を零し始めた我夢を見ると、藤宮は一旦手を止め下着を引き下ろして足から抜いた。再び自身を愛撫され、我夢は藤宮の肩に縋り付いて果ててしまった。
 息を荒がせがくりと頭を落とした我夢の背中を撫でながら、藤宮は受け止めた液を指先に伸ばし、奥に秘められた場所へ塗り込めるように挿入していく。びくりと身体を震わせ、痛みと異物感に眉を顰める我夢を宥めるように口付け、藤宮は更に指を増やして中を拓げていった。
 濡れた音が下半身から聞こえ、我夢は赤く染まっていた頬を一層紅潮させる。いつのまにか再び我夢自身も力を取り戻し始めた。
「藤宮…も…」
 甘く掠れたその声に、藤宮も我慢の限界を迎え、指を引き抜くと我夢の腰を支えながらゆっくり自身の上に降ろしていく。
「…く…っ…」
 痛みに顔を顰める我夢を気遣いながらも、藤宮は先端を挿入させると一気に腰を落とした。ひくりと我夢の身体が痙攣する。馴染むのを待って藤宮はゆっくり腰を突き上げ始めた。
「あっ……ん…っぅ」
 我夢は両腕を藤宮の首に回し、必死に縋り付いた。自分の口から出る甘ったるい嬌声が恥ずかしくて、唇を噛み締め声を殺そうとする。だが揺すり上げられ腰を回されて、我夢は口を結ぶことも出来ずただ感じるままに声を上げることしか出来なかった。
 一際大きく藤宮が腰を突き上げ果てると、我夢はがくりと顔を伏せる。そんな我夢を布団に横たえ、藤宮は乱れた浴衣の帯を解いて前を開いた。
 我夢の大きく上下する胸も身体も、ほんのりピンク色がかって汗の粒がそれを一層艶かしく彩っている。まだ達していない我夢自身に唇を寄せ、藤宮は舐め上げた。
 先端を口内に含み、舌先で敏感な部分を愛撫する。びくびくとそれは震え更に硬度を増した。
 我夢は両手を伸ばし藤宮の頭を押し退けようとする。その手を捕らえて押さえつけ、藤宮は更に愛撫を続けた。
「ああ…も…やだ…それ、藤…」
 しゃくり上げるような我夢の声に藤宮は唇を離し、両足を抱え上げると再び自身を中に埋め込んだ。さっき放たれた藤宮の物で今度はスムーズに入り込む。藤宮は我夢自身を扱きながら、濡れた音を立てて突き上げていった。
「あっああっ…!」
「…く…」
 我夢が達した時、藤宮も締め付けられ内に放った。強く我夢を抱き締め、藤宮は額に瞼に口付ける。「我夢…」
 ぼうっと開いた我夢の目に映った藤宮の目にはまだ情欲の濡れた光が消えていなかった。緩く腰を突き上げられ、まだ藤宮が去っていないことを知ると、我夢は僅かに青ざめて腕を突っ張ろうとしたが力が入らない。
「藤宮…あの…」
「明日も休暇だろ」
「そ、それはそうだけど、でも、帰るんだし。仕事あるし、破滅招来体が出てきたら…って聞いてる?藤宮、もう止めとこうよ」
 我夢が何とか逃れようとあれこれ言うのを、藤宮は無視して再び首筋から胸へ唇を這わせ始めた。
「却下」
「じょうだ…ふじみやーっ…あ…ん…」
 じたばたと抵抗していた我夢も、藤宮の愛撫に翻弄され、次第に甘い喘ぎ声しか出せなくなっていった。


 今度は一人で温泉にゆーっくり行って来た筈なのに、随分お疲れね、と敦子に嫌みを言われた我夢は、なんと応えることも出来ずただ複雑な表情で、藤宮にそこの名産だと渡された熊エキス入りはちみつローヤルゼリードリンクなるお土産をしみじみと見つめていた。

            ちゃんちゃん

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