じっと見つめているとどんどん竜の顔が近づいてきて、炎は思わず目を閉じてしまった。柔らかくちょっと冷たい何かが唇に触れ、しっとりと押し包んでくる。
「…な…に?」
それが離れていくと、炎は呆然として口元に笑みを浮かべている竜を見た。今のはキス…だろうか。
「…花火じゃない…お前が…」
引きつって笑い飛ばそうとしたが、竜の真剣な瞳にそれも出来ず炎はひくりと頬を痙攣させた。再び竜の顔が近づいてきて、後頭部を掴まれ逃げることも出来ずに口付けられる。
「…ん……リュ…ウ…」
唇を割って竜の舌が忍び込み、炎の口腔を愛撫していく。求めるものを見いだすと柔らかく、強くなぶって翻弄していった。
炎は竜のキスにぼーっと頭に霞がかかり、力が抜けていく。ゆっくり押し倒されて、背中に板の冷たい感触を感じた炎は、ちょっとマズイんじゃないかなあと頭の片隅で考えつつ竜のさらりと流れる髪の感触にうっとりとしていた。
「何をしている…」
低く怒りのこもった声に、炎はびくりと目を見開いた。だが、視界は竜の身体に遮られている。
ゆっくりと身体を起こし、後ろを振り返る竜の身体の隙間からそろりと見ると、額に青筋を立てた海が鋭い視線で睨み付けていた。
「ここは人が居なくて穴場ですねえ」
「ほんとほんと、彼女とふたりっきりで来たら楽しそう〜」
海の後ろから翼と森も顔を覗かせ、にやにやしながら炎たちを見ている。炎は慌てて竜の身体を押しのけ縁側に座り直した。
「あ…え…とお……」
何を言っていいやら、口ごもる炎に近づくと、海は手に持っていた下駄を足下に置いた。
「これが落ちていた…」
「マリアちゃんに会って、こっちじゃないかって探しに来たんだ」
「あ…サンキュ…」
何か言いたげな海の言葉を遮るように特大の花火が上がり、声をかき消した。
「うは〜っ、すげー」
「………き…だ」
「え?」
ぼそりと炎の耳元に竜の声が届く。聞き取れないそれをもう一度問おうとした炎は、にこりと笑う竜の表情に花火より綺麗かも…と見とれていた。
おしまい
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