「あ、俺リュウと帰るから…」
海の手を取らずに、炎はそのまま竜と歩き始めた。そうか…と呟く海の声に後ろを振り返ろうとしたが、竜はそのままどんどん歩いていってしまう。
「お、おい…リュウ…足、痛いんだけど…もうちょいゆっくり歩いてくんない」
「ああ…すまない。ミナコが待っているんだ…」
海の姿が見えなくなる頃、漸く足を緩めて言う竜に、炎はへえと目を見張った。美奈子が退院してからは暫く会っていない。元気でやっているだろうか。
「俺も会いに行っていいかな?」
「ああ、もちろん…今日は花火を見るといって朝からはしゃいでいる」
花火と聞いて炎はおお、と顔を輝かせた。そういえば、今日は花火があるのだった。補習だなんだですっかり忘れていた。
「病院の裏手の山からなら人があまり居なくてよく見える」
「さっすがリュウ!よく知ってんなー。じゃあ3人で今晩見に行こうぜ」
にっこり笑って頷く竜と一緒に美奈子が待つ学校の別宅…竜が一人で作ったらしい…へ行った炎は、それから夜まで3人で過ごした。